検査部取材企画「あなたの検体はどこへ向かうのか」②

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血液検査

 その他に行われているのが血液検査だ。生化学検査では血清または血漿中の分子を検査していたが、こちらでは赤血球や白血球、血小板など、血液中の細胞の数や異常を見つける、よりマクロな検査が行われている。また、止血に関わる凝固系の検査や血小板の機能検査、血栓症に関わる検査なども行われている。

血球算定・血液像​

↑血球分析に用いる装置一式

 血球算定の検査検体は、専用の採血管に採血され検査室に運ばれてくる。検体は専用のラックに収められ、この装置にセットされる。

多項目自動血球分析装置​

↑多項目自動血球分析装置

 血液中の赤血球や白血球、血小板などの血球は、体中の組織に酸素を運んだり、細菌やウイルスなどの病原体と戦ったり、止血に関わったりする重要な細胞である。それがどれ程存在しているか、またそれらに異常はないかというのは、臨床上非常に重要な情報だ。

 かつては顕微鏡を使って一つ一つ血球を数えていたこの検査も、今や自動化されている。1回の検体吸引により、赤血球、白血球、血小板の計数、ヘモグロビン濃度、白血球分類の測定が可能である。この測定を「血算」と呼ぶ。

 血球計数の基本的な原理は、「シースフローDC検出法」と呼ばれる原理が用いられている。これは血球が殆ど電流を通さないことを利用し、血球が極小の孔を通る時の周辺の電気抵抗の変化を計測することで、孔を通過した血球の数と体積を導き出している。血球の大きさはその種類によって異なるので、そこから血球の分類が可能である。

 貧血の診断に使用されるヘモグロビン濃度は、「SLS-ヘモグロビン法」という原理を用いている。赤血球内に含まれるヘモグロビンを試薬により転化させ、その色素から検体のヘモグロビン濃度を算出するものである。

 白血球分類の測定は、半導体レーザーを利用したフローサイトメトリー法を用いている。血球一つ一つにレーザーを当て、その散乱光をとらえることで、血球の大きさや内部構造の複雑さ、細胞内成分の多寡を判別するものである。これにより白血球を好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球に細分類し、その増減、また異常な血球の有無を解析する。

↑フローサイトメトリーの概略図

収納機

↑収納機 右にあるのが先程の多項目自動血球分析装置である
↑収納機の内部

 血算で特に異常が認められなかったものは、この収納機に一時保存される。仮に再検査や追加検査が必要だった場合に備え、必要になった検体をすぐに取り出せるように収納ポジションが把握できるように管理されている。

塗抹標本作成装置・鏡検

↑塗抹標本作製装置 右に先程の収納機が置かれている

 血算測定で異常が見つかった場合、臨床検査技師による顕微鏡観察が必要となる。この塗抹標本作製装置は、その作業を驚異的に効率化するものだ。

 先の装置で血算を測定したときに異常が検出された場合、検体は先程の収納機に収められる前に、この装置に入る。この装置は少量の検体を薄くスライドガラスに広げた「血液塗抹標本」を自動で作る。血液像の観察では、適切に作製された標本を使用しないと血液細胞の異常を正確に判定することができない。この装置の活躍により、顕微鏡検査を担当する臨床検査技師たちは、この装置からスライドガラスを取るだけで、良質な塗抹標本を得ることが出来るのだ。

 塗抹標本を作り終えると、検体の入った採血管は今度こそ収納機に収められる。

↑顕微鏡観察に使われる顕微鏡

 原始的とも思える顕微鏡観察であるが、これもまた重要な検査である。

 血球の中には装置では検出できない細胞形態の変化というものも存在する。たとえばウイルス感染時のリンパ球の変化や正常細胞に紛れ込んでいる造血器腫瘍細胞などは装置で完璧に識別できるわけではなく、顕微鏡下で人の目でとらえられる。詳細な細胞分類は機械で行うには至っておらず、判別するには鏡検が必須なのである。

 検査機器の性能は向上しているが、その機械を効果的に使用し、人の力を合わせることで病気の早期発見ができるのである。

凝固系​

↑全自動血液凝固測定装置

凝固系:血液はきちんと固まるか

 ヒトの血液には凝固系という止血システムが存在する。血中のフィブリノゲンという糖タンパクはトロンビンの作用により、フィブリンというメッシュ状の繊維に変化し、血液を凝固させる。

 この凝固系を試験管内で再現し、血液が凝固するまでの時間を測定することで、止血異常などの有無を確認することができ、手術など処置前の非常に重要な情報となる。この機械では凝固系を活性化させる試薬を検体の血漿成分に投入し、凝固するまでの時間を自動で計測してくれる。これにより止血の能力やその異常を確認することができ、また現在では、血液中の凝固反応の過剰を表す分子マーカーや血栓の有無をとらえることもできる。

フローサイトメーター

 多項目自動血球分析装置に搭載されているフローサイトメトリーだが、細胞解析に特化した専用の機材も存在する。

 こちらでは、細胞にレーザーを照射し、その散乱光から得られる情報だけではなく、蛍光色素の付いた抗体を利用することで、細胞表面または細胞内にある細胞系統を特定する抗原や細胞機能を表す分子を同定することが可能である。

 ここから得られる情報は、リンパ球サブセットの分類や、造血器腫瘍の診断に使用される。顕微鏡ではわからない細胞の特徴や異常をこの機械でとらえることができる。

 このフローサイトメトリーを院内のルーチン検査で実施している施設は少なく、多くは外注委託となっている。東北大学病院検査部では上記の検査を行った上で、更に情報が必要な場合に、さまざまな造血器腫瘍に柔軟に対応し、迅速な検査結果の報告を行っている。

↑フローサイトメーター